清人が仕事を持ち込んでから三日後、直桜と護は栃木県小山市に来ていた。郊外にある廃墟のアパートは立ち入り禁止のテープが張られている。
「邪魅の濃さが桁違いですね。浄化は済んでいるはずですが、元々、邪魅が溜まりやすい場所でもあるのでしょう」
辺りを見回す護の横顔を眺める。
未玖の魂魄を祓って以来、護が邪魅に中てられることはなくなった。
(むしろ邪魅の多い所にいると調子良さそうに見えるな。鬼って本来、そういう生き物か)
安心する反面、少し残念にも思う。
(もう、邪魅を吸い上げてやる必要はないんだな)
頭の片隅でそんなことを考えながら、直桜は護の後ろについて歩いた。
アパートの外階段を昇っていく。錆びかけた鉄製の階段は、一歩踏み込むたびにギシギシと音を立てて揺れる。
二階の一番奥の部屋の前に立つと、籠った邪魅の気配だけで吐き気がした。
「本当に浄化、済んでるのかよ」
口元を覆い、思わず漏らす。
「辛ければ、待っていてください。私が確かめてきますから」
直桜を下がらせようとした護の手を押しのけて前に出た。
「行くよ。俺が入れば、それだけで清祓できるし。中の様子、実際に確認しないと意味がないから」
「そうですね。では、こうしましょう」
護が直桜の手を握った。
顔を見上げたら、ニコリと微笑まれた。
「これは何か意味があんの?」
「私が盾になれば、直桜に向く邪魅が減るでしょうから」
護が嬉しそうなので、手を握ったまま、部屋の中に入った。
現場は呪術が行われた状態そのままで保管さ